6人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
突然空気がまっぷたつにされた。後方の入口で仁王立ちしている先生の姿に、背筋がつる勢いで伸びる。
「す、すいません! もう帰ります!」
「ちゃんと電気消して、窓の鍵も閉めておけよ」
細く長い溜め息をつきながら視線を戻して……サチの姿がないことに気づく。
「あれ、サチ?」
「ごめん、ここよ。私、そろそろ帰るね。邪魔しちゃってごめんなさい」
声は、彼女が教室に入ってきた方向から聞こえた。ドアを壁にして手だけを出し、ひらひらと振ってすぐに引っ込めてしまう。
「お、おい!」
よかったら一緒に帰ろう。
喉まで出かかっていた誘いは、無情にも押し戻されてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!