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「あ、ご、ごめんなさい。ちょっと、びっくりしちゃって」
何がびっくりしたんだろう? 尋ねる前に、彼の声が割って入った。
「結城駿太。用事があるのは、厳密にはこの彼女だ」
「ま、待て待て。その前にお前は誰なんだよ!」
「僕のことはどうでもいいだろ」
「よくない! 無理やり連れてきたくせにそれはないだろ!」
彼はわずかに言葉を詰まらせたあと、心の底から不本意とばかりに口を開いた。
「……御守怜(おんもりれん)だ」
「おんもり……? あー、中二病とか霊能力者とか言われてる奴か」
顔立ちは女子曰く中性的で悪くないが、近寄りがたい空気をまとっていて友達はゼロに等しいらしい。霊能力者というのは、一人で喋る姿を見たという話から生まれた噂だ。
「だから名乗るのは嫌だったんだ……! 勝手に人のことあれこれ言いやがって!」
暴走しそうな御守をなだめつつ、彼女は改めて名を名乗った。サチは漢字で沙知だと、仏頂面の彼がスマホで教えてくれる。
「で、そのサチさんが一体オレに何の用なんだ?」
サチはにっこりと満面の笑みを浮かべて、告げた。
「楽しいこと大好きだっていう結城くんに、初めて参加する文化祭のエスコートしてほしいの」
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