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「だって、なんかいやらしーい顔してるんだもの」
とっさに両手で顔を覆った。そんな下心、当時だって全然持ってなかったのに!
と、隣から盛大に吹き出す声が聞こえた。
「もう、大げさすぎ! 冗談よ冗談!」
サチはお腹を抱えている。あの子も、こんなふうに気持ちよく笑っていた。
「結城、まだいたのか」
突然の御守に驚いてしまった。扉が開く音にも気づかなかったなんて、相当サチと話し込んでいたらしい。
「沙知に用事があるんだよ。てなわけで、お前はさっさと帰れ」
まるで虫を払うかのように手をひらひらされた。文句のひとつでも言ってやりたかったが、サチのどこか申し訳なさそうな瞳に口を引き結んでしまう。
一体、どういう用事なんだろう。
もやもやが、じわりと胸に広がった。
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