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第四話
「あっ、来た! 待ってたよー!」
屋上の扉を開けた瞬間、昨日と負けず劣らずの笑顔が出迎えてくれて、つられて口元が緩んでしまった。
文化祭の盛り上がりは、中学校に負けず劣らずの勢いだった。初めて見る催し物が多く、来年の参考にしようと早くも頭の中にネタを溜め込んでいる自分がいる。
喫茶店は、狙い通り朝から大繁盛だった。中学時代からの友人も何人か来たが、実にお前らしいと素直なお褒めの言葉もいただいたほどだ。
「昨日はいろいろ回れて楽しかったけど、今日はほんと期待しちゃうな~。だって結城くんプロデュースの喫茶店だもん!」
「お化け屋敷に屋台巡りに迷路に……昨日はノンストップだったな」
返事と苦笑で誤魔化す。プロデュースなのは間違ってないのだが……言いたいのに言えないのがツラい。
そんな彼女のテンションとは対照的に、横で御守がぐったりと壁に寄りかかっていた。
「……お前、ほんと大丈夫か? 昨日もこんな調子だったじゃねえか」
「いいから、僕のことは気にせず行ってこい。今日は薬があるし、大丈夫だ」
御守は気だるげに溜め息をつく。まるで熱に支配されているような衰弱ぶりを目の当たりにして、納得しろという方が難しい。
しかし、サチの勢いに飲まれて屋上をあとにするほかなかった。
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