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第一話
夏休みが明けると、たったひとつ楽しみにしているものがある。文化祭だ。
特に出し物の企画を考えるのが好きで、その原動は「たくさんの人を楽しませたい」だった。
そんな性だからか、気づけば中心的役割を担うことが当たり前になっていた。
「うーん、いねえなぁ……」
三年生のフロアは少し緊張する。雰囲気も、バカみたいに明るいだけの一年とは違って確かな落ち着きがある。二年の差は大きい。
廊下をゆっくり歩いてすれ違う女子をちらっと見ながら、あるいは勇気を出して教室を覗き込んでみているのだが、サチは一向に見つからない。
あの後、彼女と別れてから御守に簡単な事情を聞いた。
現在三年生であること。いとこ同士であること。ずっと入院生活を続けていて、今年になってようやく少しずつ登校できるようになってきたこと。学校行事はどれも初体験だが、文化祭が何よりの楽しみであること。
『お前を選んだのは目立つ存在だからだ。さっきは僕のことをあれこれ言ってたが、お前も大概だぞ。よく騒いで怒られてるだろ』
余計な内容も多かったが、目のつけどころは悪くない。
「もしかして、屋上、とか?」
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