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第三話
予想通り、十月に入ってから文化祭の準備が本格化してきた。
クラスの出し物はオーソドックスに喫茶店としたが、クラスで顔面偏差値の高い、あるいは人気のあるアニメキャラのコスプレをした生徒がウエイトレスをしたり、ビンゴ大会のようなゲームやドリンク代が安くなるサービス時間があったりと、なるべく個性的な喫茶店を目指している。
それとは別に、もうひとつ特別なイベントを用意していた。
だからこそ、こうして人の倍働いているわけなのだが。
「うえ~、もう五時半になるのかよ! あともうちょっとなのに……」
紙の輪飾りを紙袋四つ分作るミッションを今日のうちに終わらせたいと思ったのだが、細かい作業が苦手なのもあってなかなか捗らない。校庭を見れば、どっぷりと暗闇がおりていた。
「ふふ、頑張ってるね」
いきなり第三者の声が響いて、驚きのあまり引きつった悲鳴がこぼれた。勢いあまってつなげた紙を引きちぎってしまう。
「さっ、サチ!? いつの間に!」
「ドア、開けたの気づかなかった?」
くすくすとサチは可愛らしい笑い声をこぼす。廊下が薄暗いせいか、わずかに揺れる黒髪が溶けているように見えた。
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