Chapter1・水曜日の恋人

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 答えは約1か月前、入学式に遡る。岡崎くんは、入試トップの成績で、入学式の時に、新入生代表に選ばれていた。すらりと細身の長身で、鼻筋の通った小さい顔はモデルみたいだった。赤いフレームの眼鏡を掛け、品のある表情に、堂々とした口調で、新入生代表の言葉を読み上げていた。  つい最近まで、中学生だったとは思えない落ち着きようだった。催事着用の金色のネクタイと、紺色のブレザーがよく似合っていた。彼を見た瞬間から、岡崎太賀くんは私の密かな憧れになったのだ。  その憧れの岡崎くんが今、目の前に立っていて、私の名前を呼んだ。これは夢なのだろうか? 携帯を持つ手が震えていた。じっと彼を見つめると、その大きな瞳に吸い込まれそうになる。鼓動が高鳴り、相手に聞こえそうな位に、耳元で響いた。急に喉が渇いてくる。 「ごめん、急に話しかけて、びっくりしたよね? 僕、1年A組の____」 「お、岡崎、た、太賀くんですよね?」  声がどもってしまった。変な子だと思われなかったかな? 急に不安になる。 「あ、僕の名前、知っててくれてたんだ。……嬉しいなあ」
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