Chapter1・水曜日の恋人

4/21
前へ
/192ページ
次へ
 そう言って岡崎くんは笑顔になった。今、嬉しいって言った? 間近で見る岡崎くんの笑顔に、どくんと心臓が大きな音を立てた。 「えっと、何か用ですか?」  おそるおそる訊ねると、 「えっ? あぁ、そうだよね?」  岡崎くんは急に慌てたような表情になった。辺りをきょろきょろと見渡し、誰もいないことを確認すると、「うん、よし、大丈夫!」と自分を励ました後で、私の瞳をじっと見つめて告げた。 「1年E組、雫井結衣さん、僕、君のことが好きです」 「え?」  私はそのまま固まってしまった。  今、何て? 岡崎くんが、成績学年トップの岡崎くんが何ですって? 「好き?」  誰が、誰を? 「僕が、雫井さんを」  確認するように岡崎くんは自分と私を順に指差した。 「えぇっ!?」  私は思わず声を上げてしまった。 「何で?」  何で、私なの? 私なんて、普通を絵に描いたようなイチ女子生徒で、成績が特別いいワケでもないし、別のクラスに名前を轟かせるような美人でもない。岡崎くんが、私の名前を知っているだけでも驚きなのに! 「……何で? って、僕が何で雫井さんを好きになったかってことだよね?」  岡崎くんは、照れ臭さそうに後ろ頭を掻いた。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加