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第 八 章 グラナートの出現
途方に暮れていたところ、ある夜、アンバニアの元に、
ホークアイに滅ぼされてしまった、と思っていた片割れ、
グラナートが 青年の姿で現れる。
栗毛色の髪に 肩幅の広い偉丈夫だ。
「グラナート!!ゆ、幽霊か!?」
アンバニアが皺だらけの 眼を押し開く。
「若者の眼に、少女の緑の瞳の力を宿らせればよい。
お前の呪術でそれが できるはずだ、アンバニア。
さすれば あのオッドアイの若者は ホークアイと闘える。
若者と少女も身体ごと一体にならなくて済むのだ。
俺たちもどうやって戦ったのか、忘れていたのか?」
苦笑し、グラナートは 老婆を見やった。
「実際、生きているのかどうか 分からない頼りない存在だよなあ、俺は」
しかし、かつての恋人の言葉は 鮮烈に老婆の記憶を甦らせた。
グラナートの瞳に宿らせたアンバニアの視界にいきなり
ホークアイとの決戦の時が。
一面、黄金の世界。吸い込まれるような光彩。邪悪に満ちている。
グラナートの五感に 異空間にいるような周りからの無数の
黄金の瞳に見つめられているようなぞっとする感覚。わんわんと耳朶に響く
ホークアイのおどろおどろしい声。
どうにか 気持ちを奮い立たせて太刀を構えて突進。
しかし、次の瞬間、グラナートの胸にホークアイの太刀が突き立っていて、
アンバニアは自分の瞳でそれを見下ろし、絶叫したのを覚えている。
よって―――、グラナートは ホークアイに敗れ去ったのだった。
そして、あれから何万年、経ったのか突然、戻ってきた。
ホークアイと琥珀の秘密を携えて―――。
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