龍一の能力

4/9
前へ
/83ページ
次へ
血を流しすぎたのか、それとも酸素不足のせいか、男の意識は朦朧としている。 自分がなんでこんな目にあっているのかも思い出せなくなった頃、 「代永の客人はどこだ?」 龍一に問われた。 これに答えれば楽になれるのだろうか。 解放してもらえるのか。 そんなことを考える前に、男の口は動いていた。 「……地下、だ」 それを聞くと龍一は、表情ひとつ変えることなく、男の顔を再び水の中に突っ込む。 地面に落ちたセミのように手足を動かして、やがて男は静かになった。 龍一が濡れた腕を不快そうに払えば、男の体は力なく、洗面台の下に崩れ落ちる。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加