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血を流しすぎたのか、それとも酸素不足のせいか、男の意識は朦朧としている。
自分がなんでこんな目にあっているのかも思い出せなくなった頃、
「代永の客人はどこだ?」
龍一に問われた。
これに答えれば楽になれるのだろうか。
解放してもらえるのか。
そんなことを考える前に、男の口は動いていた。
「……地下、だ」
それを聞くと龍一は、表情ひとつ変えることなく、男の顔を再び水の中に突っ込む。
地面に落ちたセミのように手足を動かして、やがて男は静かになった。
龍一が濡れた腕を不快そうに払えば、男の体は力なく、洗面台の下に崩れ落ちる。
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