アイラッシュレイヴ~値札の男

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 朝。従業員更衣室。  俺の1日は、通勤着のスーツから制服に着替えるところからはじまる。  上着を脱いで、ベストを着たら、髪をセットする。  いたってノーマルなショートカット(サロンの美容師いわく、ツーブロック)を、軽くジェルでなでつける。染めてはいない。  どこから見ても、清潔感あふれる電気屋の店員だ。  これほどにサラリーマン然としている男はいないと思う。我ながら。  年度末商戦のため、制服の上に、それ用の法被をはおる。正直言ってダサい。そして恥ずかしい。  2100年をとうに過ぎたというのに、これだけは、未来永劫、変わらないのかもしれない。  鏡の前で、笑顔をつくる。  ようし。今日も売ってやる。  バックヤードと売り場をつなぐドアを開け、深々と一礼した。
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