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そして、福は、目を覚ました。
そこに見えるのは、かつて幸と福が二人で使っていた子供部屋だ。
でも、実際は、子供の頃の福は、この部屋に来た事は数回しかなかった。
ほとんど寝たきりだった福は、リビングで一日の大半を過ごしていたから。
福は、リビングへ降りてみる。
懐かしいコーヒーのいい香りがした。
そして、台所に立つママの姿が見た福は、こみ上げてくる涙を必死に飲み込んだ。
泣くわけにはいかない。
神様との約束の一つに、幸以外の人達には、絶対に福の存在を知られたらいけないという決まりがある。
「幸、起きた?
早く支度してご飯食べちゃいなさい」
福は小走りでママの元へ駆け寄り、そして、後ろから抱きついた。
「ママ、おはよう」
「やだ、幸、どうしたの?」
福は、抱きついたまま離れない。
「ちょっと怖い夢を見ただけ、ママと離れ離れになっちゃう夢を…」
「何、子供みたいな事言ってるの」
そう言うと、ママは笑った。
福が大好きだったママの笑顔は、今でも何も変わらずにそこにあった。
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