コロッケ

　コロッケは、やっぱり揚げたてが一番美味しい。それも、肉屋のものに限る。スーパーなんかのお惣菜コーナーで売られているコロッケは、どれも変に油っこくていただけない。
　その点、『よしだ精肉店』のコロッケはとても美味しくて、あたしの一番のお気に入りだ。衣もサクサクカラッとしていて、油っこくない。値段が一個五十円というのもリーズナブルで、ポイントが高い。

　あたしは今日も『よしだ精肉店』で買った揚げたてのコロッケ持って、近所の川原に向かう。仕事が休みで雨さえ降っていなければ、だいたいいつもこうだ。　
　移動には、決まって自転車を使う。狭い路地を抜けて堤防の上を走ると、爽やかな風が全身を吹き抜けてゆく。そうすると、あたしの体の中にたまった澱んだものが、一気に溶けて浄化されるような気がする。
　堤防からに降りる坂を細い坂を下ると、ブルーのシートがけかられた小さな家に向かう。そこには『テッちゃん』が住んでいる。
「テッちゃーん、いる？　コロッケ買って来たよう」
　あたしが大きな声で呼び掛けると、ブルーシートの奥から「おう」と返事があって、テッちゃんがひょっこり顔を出した。