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『テッちゃん』という名前は、あたしが適当につけた。休みのたびにひとりでここに来てコロッケを食べる『リセットの儀式』を繰り返すうち、自然と口をきくようになって半年になる。歳はハッキリとはわからないけど、六十歳前後なのではないか、とあたしは睨んでいる。
「今日は、仕事は休みか」
「うん。でも昨日まで大阪だったから、もうクタクタだよぉ」
テッちゃんの家は、廃材とダンボールとブルーシートで出来ている。家の中は六畳くらいの広さがあって、部屋の奥にはテレビや炊飯器、小さいながらも冷蔵庫まで揃っている。これらの電気は全て、ディーゼルの自家発電機でまかなわれていた。
テッちゃんは身なりもこざっぱりとしていて、過酷なはずの野外生活の厳しさは不思議と感じられない。その生活ぶりは、いわゆる普通の路上生活者とはあきらかに一線を画していた。
あたしは当初、テッちゃんの川原での不思議な暮らしに興味を持った。でも今は数少ない友人のひとりとして、テッちゃんを見ている。
「そりゃ、お疲れさん。まぁ、お茶でも飲むか」
テッちゃんはそう言いながら、人懐っこい笑顔をあたしに向けた。そしてあたしは、その笑顔が大好きなのだった。
大きな焼酎のペットボトルに入った水を小さな鍋に注いで、携帯用のガスコンロに火をつける。あたしはその隣で、お湯が沸くのを待ちきれずにコロッケの包みをガサガサと開けた。
「インスタントコーヒーしかないぞ」
「オッケー、オッケー」
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