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彼は、言葉通り優しく抱き締めてくれる。感情が溢れ涙を流す私を何も言わずに受け止めてくれる。どうしよう。今さらだけど、ドキドキしてきちゃった。男女二人きりの密室。
密着していた体を離して、彼の目を見つめる。潤んだ私の目を見て彼は、どう思ってるんだろう?でも、私…可愛い方だと思うし、ちょっとは大胆になってもいいかな。そう考えていると自然と唇を近付けていった。驚いていたようだけど、彼も受け入れた。
「んっ…ん…」
重なる唇。頭がとろけそう。余韻に浸りながらも唇が離れると彼は、何か言いたそうにしてる。急にどうしたの?なんて、聞かれるのかな。ドキドキしながら彼の言葉を待った。
「両親がいなくなって寂しいかい?」
何だ、そんな事か。私は模範解答でも見せるかのように再び涙ぐませながら、彼に答えた。
「うん、辛くて耐えられないよ」
ふふ。でも、今はあなたがいるし大丈夫よ。彼への思いの言葉はまだ出さなかった、すると今度は彼から迫ってきた。
「そっか。なら…」
私は唇をふさがれ目を閉じると、とろけそうな幸せの時間が流れた。ずっとずっとこうしていたい。でも、何だろう。幸せ過ぎたのかな…何だか、頭がボーッとしてきたな。
「!!」
目を開けると気のせいじゃなかったことに気付く。彼は、私の首を締めていた。
「っ…あ…や…めてっ…」
余韻から現実へと戻ってきた私は必死に彼に懇願する。しかし、彼の手は緩むことなく躊躇なく私を殺そうとしているのだと気付く。必死にもがく合間、彼は優しく冷たい言葉を放った。
「あの世で、両親に会わせてあげる」
悲しみの涙も今は、恐怖の涙に変わった。私の力ではもう抗えないんだ。絶望と苦しみの最中、さらなる言葉を彼は続けた。
「苦しんでる人を見るとほっとけないんだ、君のお母さんもそうだったよ」
「っ…!」
「僕は君のお母さんが入院していた病院の看護士だよ。お母さんも苦しそうにしていたから、僕が楽にしてあげたんだ」
「だから、君も…安心して死んでいいよ?」
「僕は優しいから…」
その言葉の後、私は意識が遠のいていった。

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