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『この世界にはな、魔法ともうひとつ、魔鉱石ってのが存在するんだ。』
白髪の髪の長い青年が、目の前の少年2人に、まるで物語を聞かせるように語る。
少年達は目をキラキラさせながら、青年の話に耳を傾けていた。
『魔法って言うのは知っての通り、何もない空間から何かを産み出したり、物を操ったりする力の事なんだが。
魔鉱石っていうのは自然元来に存在する現象を操ることができるんだ。』
『すごい!』
『ええ~…なんかうそくさいなぁ…』
黒髪の少年が感動する隣で、蒼い髪の少年は唇を尖らせた。
青年はそんな彼らを見て、愉快そうに笑う。
『なんだデリック、俺が嘘をついてるっていうのか?』
『だって、魔法があるなら、そんな石いらないじゃんか!』
『これがな、魔法では難しいことが、魔鉱石なら簡単に出来ることもあるんだ。
例えば…そうだなぁ…魔法で雨を降らせるのは難しいけど、魔鉱石を使えば簡単に降らせることが出来るぞ。』
自信満々に青年は答えるが、まだ少年からの疑いは晴れていないようだ。
『じゃあ、さっそくその魔鉱石ってのをつかって、雨をふらせてみてよ!』
『残念ながら数ある種類の魔鉱石を扱えるのは、その加護を受けた人だけなのさ。つまり俺にはできません!』
ごめんね、と青年が笑うと蒼髪の少年はぷぅっと頬を膨らませ、不機嫌を露にした。
一方で黒い髪の少年は、相変わらずキラキラとした瞳で青年のことを見つめている。
『お、ラギは俺のこと信じてくれるのか?』
『うん!だってヨハンさんのお話、おもしろいだもん!』
『面白いかどうかですか…』
その返答には少し悲しさを覚えた青年だったが、すぐに気を取り直して話を続ける。
『でもな、この世界の何処かには誰もに加護を与え、この世界の全てを操ることができる魔鉱石もあるらしい。
それを使えば俺だって、雨を降らせることができるはず…!』
『じゃあそれ持ってきてよ。』
『え』
『おれもそんな石を見てみたい!』
『ラギまで!?』
味方だと思っていた少年にまでそう言われてしまったら、もうどうしようもない。
青年は諦めて別の話に切り替える。
『じゃあ次に、俺の可愛い彼女の話をしよう。』
『『しなくていい』』
今度は2人揃っての辛口コメントだった。
青年はやれやれと思いながら、2人の少年に自分ののろけ話を聞かせるのであった…。
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