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置いていかれたラギはどうすることもできず、ポカーンとしていた。
少しの間2人の間に沈黙が流れたが、それを破ったのはハンナだった。
『…ワーナー様。ここではなんですから、移動しましょう。ご案内します。』
『あ、はい。お願いします。』
研究室を出ていくハンナに続いて、ラギもその場を離れた。
再び何もない、真っ白な廊下を歩く。
そして、まるで自分達以外には誰もいないのではないか、と思わせるほどに、人とすれ違うことがなかった。
ディターミナの本部では全員が全員任務に出払っていることはなく、駐在している者もいるので、人が殆どいないことにラギは気が落ち着かなくなった。
『人、少ないんですね…。』
『殆どの方が、この扉の向こう側におりますので。
廊下に人がいないだけですよ。』
そう言ってハンナは前へ進んでいく。
彼女から口を開くことはなく、ラギも何を話したら良いのかわからず、ただその後ろをついていった。
しばらく歩いていると、ある扉の前でハンナが立ち止まった。
そしてその扉を開け、どうぞとラギに入るのを勧めた。
『ありがとうございます。』
なかに入ると、そこは至って普通の客室だった。
ソファーを勧められ、ラギはそこに腰を下ろす。
『お茶を淹れて来ますね。温かいものと冷たいもの、どちらが良いですか?』
『じゃあ冷たいものでお願いします。』
『かしこまりました。』
ハンナは一度部屋を出ていくと、すぐにお茶を乗せたトレーをもって戻ってきた。
どうぞ、と差し出されたお茶を受けとり、いただきますとラギは受け取った。
向かいにハンナが座る。
ラギは改めて彼女のことをよく見てみる。
ハンナは肩につくくらいの、ふんわりとした栗色の髪の少女だった。
ぱっちり二重というわけではないが、少したれ目の、落ち着いた瞳だ。
何か話した方が良いかと思ったラギは、先ほどレニーがラザフォードに渡していたものについて聞いてみた。
『あの、さっき僕らが届けたものって、何なんですか?』
『何もご存知ないのですか?』
『はい…色々と勉強中の身でして…。』
ハンナは手を口元へ運び、少し考えるようにしてから答えた。
『そうですね…全てをお話しすることは出来ませんが、概要でよろしければ。』
『構いません、よろしくお願いします。』
『分かりました。』
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