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◇ラストバトル前の緊張感
くだらねぇ、面倒クセェ。
……そうやって目を背けてきた現実が、唐突に牙を剥いて襲ってきやがった。
「は? 俺がステージに? 冗談だろ?」
「諦めろ。表を知らずに、裏が出来るか」
なんて会話が交わされたのが、一ヶ月前の事。
相手は音楽教師で、俺が押し付けられた文化祭実行委員会の顧問の一人だ。
綺麗に整えられた黒髪に怜悧な顔つきでエリート音楽家みたいなナリしてる癖に、中身はハードロック万歳の能天気ヘビースモーカーときた。
係決めのHRを諸事情でサボって実行委員にされ、仕方なしに委員会に顔を出すと訳もわからぬままステージ演奏係を拝命した俺は、その顧問たる音楽教師からさらに追い打ちを掛けられる。
曰く――この係は例年【演者】がやるモノだから、腹括って出ろ、との事。
だから俺は今、文化祭真っ最中の暗いステージ袖で、内から溢れ続ける緊張感で吐きそうになりながら出番を待ってる訳で。
そろそろ前の出演バンドが終わる。
やべ……手足の先から血の気が引いてんじゃねぇか。
おまけに小刻みに震えてて、このまま出ていったら単なる笑い者に……。
「よっしゃ! そろそろ出番だぜ!」
「うわ、びっくりした!」
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