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良し、この調子で次々探すぞ。
とりあえずまだ文化祭準備で人は残ってるだろうし、もう一回校内を歩いてみるか。
いつもは部活の声くらいしかしない放課後。
今日からは文化祭の準備期間ともあってずっと昼休みのような、いやそれ以上の喧騒が長い廊下を駆け抜けている。
木材に釘を打ち付けて何か工作する音。
あれこれ相談しながら作業する楽しそうな声。
演劇を練習する者や、廃材でドラムの真似事をする者も……ん、ドラム?
楽器出来る人材発見?
通り過ぎそうになった身を引き戻し、その二年三組の教室内を覗き見る。
人だかりの真ん中で空箱とか鉄材とか、とにかく叩けば音の出る物でビートを刻んでる奴がいた。
赤毛の短髪に、全身に張り付いた賑やかな雰囲気……あれは中学からの知り合いで、確か名は椎橋愁。
バチを片方空中に放り投げて回転させ、もう片方で複雑なリズムを刻みつつ落ちてきた所をしっかりキャッチして淀みなく演奏に戻る。
魅せるプレイだ。
文字通り音を楽しんでる。
やがて演奏が終わり、周りから拍手と称賛の嵐。
「いやーどうもどうも!」
それに応える愁の下へ、俺は人を掻き分け無遠慮に歩み寄った。
「あら? 何か用?」
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