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目前まで迫った俺を見て、訝しみながらも笑顔を崩さぬこの男。
あまり親しくもないので互いに居心地は良くないはずだが、表情を取り繕うのが上手い。
俺は間違いなく仏頂面してるだろうし申し訳ないので、単刀直入に切り出す。
「んと……いきなりで悪いんだが、俺とバンド組んでくれない?」
「たはー! ほんっとにいきなりだねー。じゃあ聞きたいんだけど、楽器は何できるの?」
「楽器? 俺の楽器は……これ」
自分の喉を指差す。
「ボーカル? ふーん、そうなんだー。でもこっちもボーカルならいるしなー」
「ん? 他に誰かと組む予定があるの?」
「うん。ギター・ボーカルの奴とね。後はベースが揃えば良いんだけど、なかなか見つからなくてさ」
顎に手を当てて考え込む仕草をする愁。
ベースなら、賢が出来るって言ってたな。
「なら丁度いい。こっちはベースいるぞ」
「……へぇ? 誰?」
「二組の、安西賢治郎」
「え? マジで?」
それまでずっと笑顔を崩さなかった愁が、初めて驚愕に目を見開いた。
え、何?
アイツ何か引かれるくらいの事をやらかしてんの?
「……そっかぁ、俺らの誘いを断ってたのは、浅石と組む為だったのかぁ」
「んん? 誘い? 何、賢をバンドに誘ってたの?」
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