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■レベル上げ
メンバーが揃って課題曲を決めてから一週間後。
「まさかオメーがバンドとはなぁ」
愁の自宅のドラムセットが置いてある音楽部屋にて、俺の左側で鷹也がギターを担ぎながら無駄口を叩く。
「てっきりゲームにしか興味ねぇんだと思ってたぞ」
「ん、まぁ、一旦引き受けた以上は、ちゃんとやろうかなって」
それに歌うのは嫌いじゃない。
最初は嫌いだったけど。
「ふーん? 責任感ってやつか。サボり魔から出た言葉とは思えねぇ」
「ほっとけ」
「準備いいよ」
右側の賢治郎が、左利き用ベースを担いで涼しい顔をしている。
防音対策で締め切ったこの空間は、お世辞にも涼しいとは言えないが。
「じゃあ早速だけど、練習の成果を見せてもらおう!」
俺の目の前、部屋の奥に設置されたドラムセットに座る愁がそう告げ、すぐに景気良くバチ同士を打ち合わせてリズムを取り演奏が始まった。
途端に耳を劈く爆音。
狭い空間にドラムの快音が腹腔を震わせる程の振動を伴って反響し、電子弦楽器の重厚な旋律が混ざり合う。
俺はその中で、マイク無しに歌いだした。
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