■レベル上げ

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 自分の声なのに、自分の耳にすら周りの音に掻き消されてあまり届かない中、それでも遠くに声が届くように、リズムを外さないように、自分の身体を楽器にして声を張り上げる。  やがて演奏が終わり、それぞれの総評を聞く事に。 「ふーん? まぁまぁじゃねぇの?」  まず投げやりな鷹也が口を開いた。 「とりあえず、形にはなってるね。この爆音の中で、燎の声が聞こえたのが一番の驚き」  次いで意外そうな顔の賢。  そして最後に、目を瞑って難しい顔をしている愁の言葉を待つ。 「……このままじゃダメだな」  やがて目を開いた愁にはいつものヘラヘラした雰囲気は無く、表情が冷たい。  そのままベースの粗を指摘して賢をムッとさせ、ギター兼コーラスの鷹也にはどちらも雑だと言い放った。 「そしてボーカル。最高音まで半音足りてないし、シャウトすべきところで裏声になってる。他もいくつか音程外してる所あるし、歌唱力も足りない」 「ぐっ……いや、そりゃいきなりプロみたいにはいかねぇよ」  おいおい、このまま解散か?  せっかくメンバー集まったと思ったのに。 「……だから指摘してるんだ。本番までまだ時間はある。きっちり修正していこう」  そう告げた時の愁の笑顔は、自信と期待に満ちていた。 「ん? じゃあ、組んでくれるの?」     
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