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自分の声なのに、自分の耳にすら周りの音に掻き消されてあまり届かない中、それでも遠くに声が届くように、リズムを外さないように、自分の身体を楽器にして声を張り上げる。
やがて演奏が終わり、それぞれの総評を聞く事に。
「ふーん? まぁまぁじゃねぇの?」
まず投げやりな鷹也が口を開いた。
「とりあえず、形にはなってるね。この爆音の中で、燎の声が聞こえたのが一番の驚き」
次いで意外そうな顔の賢。
そして最後に、目を瞑って難しい顔をしている愁の言葉を待つ。
「……このままじゃダメだな」
やがて目を開いた愁にはいつものヘラヘラした雰囲気は無く、表情が冷たい。
そのままベースの粗を指摘して賢をムッとさせ、ギター兼コーラスの鷹也にはどちらも雑だと言い放った。
「そしてボーカル。最高音まで半音足りてないし、シャウトすべきところで裏声になってる。他もいくつか音程外してる所あるし、歌唱力も足りない」
「ぐっ……いや、そりゃいきなりプロみたいにはいかねぇよ」
おいおい、このまま解散か?
せっかくメンバー集まったと思ったのに。
「……だから指摘してるんだ。本番までまだ時間はある。きっちり修正していこう」
そう告げた時の愁の笑顔は、自信と期待に満ちていた。
「ん? じゃあ、組んでくれるの?」
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