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◇バトル
光陰矢の如しとは良く言ったもので、忙しくも楽しい日々なんて、本当に矢みたいに過ぎ去って行く。
あれからクラスの出し物の準備に追われ、定期的に開かれる委員会に顔を出し、合間にはバンドの練習。
ステージ演奏係としては商店街の音楽屋にアポを取り、バンド演奏で使う楽器や機材のレンタルと搬入の手続きをして、前日に参加バンド全員で搬入・セッティング等をやっていたら、気付けば四週間ほどゲームを全くしない日々が続いていて、いつの間にか本番当日で。
――俺は今、ステージに上がっていた。
全ての窓を暗幕で締め切り、暗闇が支配する体育館の中で、ステージ上の俺たちだけが照明を浴びている。
熱気が篭っていた。
それはただ空気が熱いだけじゃない。
人の……気持ちが昂ぶっているのだろう。
まだ演奏なんて始まってもいないのに、ここに立っただけで歓声が凄まじい。
けれどステージを、向かって天井付近から吊るされたスポットライトが照らしている事で、俺たちからは観客の顔がほとんど見えないのが救いだった。
ステージ近辺は流石に見えるけど、敢えて遠くを見てりゃ大丈夫。
緊張感も、少しは誤魔化せる。
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