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だから俺は、俺の全てを以て叫ぶ事で出来た。
「……ぃぃいいくぞぉォォぉおオオおあア!!!!」
野獣の咆哮にも似たディストーションボイスを皮切りに、ドラムが動き、その合図でアンプが火を吹く。
喉の調子は良い。
気温が高いのもあるし、リップロールやタングトリル等ネットで調べた知識も役立っている。
賢が選んだ一曲目。
重厚な岩塊を思わせる洋楽ハードロック。
転がる石ころはやがて削れて砂粒になるが、巌ってやつは逆に転がるだけデカくなる。
そんな不屈の意志を乗せた英詞は、発音に苦労した。
Lの発音は舌を上歯の裏に付けるとか、THは舌を歯の間に挟むとか、そういうのを調べて徹底的に形を真似して、やっと愁のOKを貰えて。
……こんな事ならもっと、英語の勉強真面目にやっとくんだったぜ。
曲名だけ告げて、鷹也の二曲目に入る。
曲調ががらり変わり、爽快な風を思わせるイントロが流れ出す。
だが段々とその勢いは増し、サビでは完全に嵐――全てを吹き飛ばす音速の猛威と化した。
英語なんて俺の拙い発音じゃそんなに理解できないだろうに、観客は皆、それでも壊れんばかりにノッてくれている。
愁が選んだ三曲目は唯一の邦楽で、珠玉のロックバラード。
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