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そんな折に背後から予想外の大声が響いて、俺は猫が飛び上がるみたいに驚いた。
むしろその大声の主――鏡堂鷹也の方が吊り上がった猫目かつ茶色いくるくる猫毛で猫っぽいんだが。
「あ? なんだよ燎? 今更ビビってんのか? あは、うけるー」
「うるせぇ……鷹也はなんでそんな平気な顔してんだ」
「ハッ。オマエとは胆力ってヤツが違うのさ」
「……と言いながら、緊張してるに決まってんだろ? 頬が引きつって冷や汗かいてるし」
鷹也の肩に手を置いた安西賢治郎が、艶やかな黒アシメで隠れてない方の左眼を切れ長に流し、ベースを担ぎ直しながら皮肉げな笑みを浮かべている。
「だ、誰が――」
「そうそう! 例えどんだけ内心緊張してても、それを見せずに余裕面しとくのが、俺らの流儀だもんな!」
鷹也の反論を遮ったのは、賢治郎とは対照的に朗らかな笑みで場を和ます、椎橋愁。
赤毛短髪頭の後ろで両腕を組んで壁にもたれかかり、緊張なんてどこ吹く風のマイペースドラマーである。
「いつの間にそんな流儀に?」
俺の疑問は――
「まぁ細かい事は気にしない気にしない!」
「さ、行くか」
「ケッ、人の内心を勝手に語るなっての。……ほら、行こうぜ? 燎」
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