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厄介ごとから逃げるなら、やっぱいつものカラオケか。
歌って発散すれば、大抵の嫌な事は忘れられる性分だ。
我ながら単純で有難い。
なんて現実逃避の算段をつけていると、見上げていた先の窓が開き――
「あれ、浅石くん?」
――そこから顔を出した黒髪美人なクラスメイトに見つかって。
「よ、よう愛徳」
こうして俺は逃亡を断念し、しぶしぶ教室へと向かったのだった。
……教室に辿り着くと、まずは担任の有難い説教から。
「で? 今日はなんで遅刻したんだ?」
半袖ワイシャツと灰色のスラックスに身を包み、睨みつけてくる壮年の担任。
相当ご立腹らしい。
リズミカルに自身の肩へと凶器を叩きつけている。
「え、えーと、ですね」
「ハッキリせんか」
うーむ、ここは正直に言うべきか、誤魔化すべきか。
と考えてみたが、誤魔化そうにも大して妙案はなかったので、そのまま言う事に。
「新作のゲームで夜更かしを」
「たわけっ!」
クラス中の爆笑と、担任の肩を叩いていた凶器――巨大ハリセンが俺の脳天を唐竹割りする音が同時に響く。
そして俺の脳内では脳震盪の余波が響いている。
「いってぇ……なんだそれ、鉄でも入ってんの?」
「気のせいだ」
気のせい?
何誤魔化そうとしてんだこの大人は?
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