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音楽室について扉を開け放ち、適当に声を掛けながら入る。
「ちわーっす」
って俺は三河屋か。
「ん? どうした?」
応答者は、吹奏楽部を指導中の音楽教師。
綺麗に整えられた黒髪を揺らし、このクソ暑いのに洒落たベージュのスーツを上下しっかり着こなす四〇代くらいの渋いオッサン。
ステージ演奏係の件を伝えたら「バンドとして出るのか?」なんて聞かれるものだから、そんなつもりはない旨を告げると「この係は、例年演者がやるものなんだが」と難色を示された。
いや聞いてないし。
皆して面倒だからって、何も知らぬ俺に回してきやがったな?
「この際、いい機会だし出てみろ」
「は? 俺がステージに? 冗談だろ?」
つい売り言葉に買い言葉で、敬語が抜ける。
だが相手はあまり気にした様子もなく、淡々と次の言葉を繋いできた。
「一旦引き受けたんなら諦めろ。表を知らずに、裏が出来るか」
なんて「腹括れ」とか鼻で笑われながら軽く言われて。
次のクエストはどうやら、仲間探し――バンドメンバーを集める事、らしい。
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