1―カザミ

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 せめて俺の勝手知ったる(プレイし続けた)VR(仮想世界)に転移したのだと思いたいところではあったが、すでにここが見知らぬ地だとだけは理解している。  VRだったらと思っていた俺の考えは少し甘かったようだ。  この世界は俺の知るVRとは全く違う未知なる世界なのだと受け止めるしかないのだろう。  こんな時、ライトノベル(ラノベ)の主人公なら女神様から状況説明があったりと、色々な支援(サポート)を受け取ってからの異世界デビューがお決まり(テッパン)だろう。  神の加護や反則級能力(チート)を授かり悠々自適に異世界生活か、使命を託されそこそこ有意義な人生を送るのだろうが、それに比べて俺は……言うなれば事故だろ、これ。 「だだっ広い草原にぼっちで異世界デビュー。なぜこんな所に居るのか皆目検討がつかず、突如現れた黒い靄に<誰か助けてくれ!>と叫びたいのは俺の方だ」  三十近い大人がVRに心躍らせて毎晩プレイしていたら異世界デビューしちゃいましたとか、そんなユーモアあったら自称永遠の十六歳(ピーターパン症候群)なんか発症してないだろうよ。 「あーッ、くそッ!」  考えていて悲しくなってきた。  ラノベの主人公に嫉妬するよりも、今後の事を考えた方がよさそうだ。     
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