殺人衝動

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大学に入ると、僕は、よく一人旅に出かけた。あまり、人がいかないような、地方に出かけた。人気ない暗い夜道を一人で女性が歩く。そんな現場に良く出会えるからだ。 僕は、慎重だから確実に安全であると判断しない限り、彼女達を殺さないよう我慢した。 大抵は、うなじに吸い込まれるように、後ろから忍び寄り首を絞めた。殺した後は、脈があるか確認して死を確実なものにする。 平穏無事に過ごし、決してバレないように、人を殺す。 快楽に溺れずに、コントロールする。僕は、節制を旨としていた。だから、年に一人か二人殺せればいい方だった。誘惑は、ある。しかし、この楽しみを続けるには、我慢も必要だ。 僕は、大学を卒業すると二流の会社に入り、経理の仕事をした。整然とした数字の羅列は、心が踊る。しかし、そんなことに、たいした満足感はない。 僕は、時間を作っては、一人旅にでかけた。 規則正しい生活。同じ時間に起きて会社に行きたまには、残業をしたり同僚と飲んだりして、帰りが遅くなるが、0時には寝るようにした。休みの日には、掃除や洗濯、買い物をして過ごす。そして、時たま一人旅にでて、人を殺した。変化は、あまりない平凡な生活。 でも、僕はこの生活スタイルが気に入っていた。 ふと、立ち寄った小さな公園。蝉が、けたたましく鳴いている。人気ない。手が届きそうな蝉を握り潰す。おかしな断末魔をあげて蝉は残骸になる。 もう一匹。 断末魔。 残骸。 もう一匹。 断末魔 残骸。 人が来る前にやめよう。 公園の水道で手を洗う。 仲間が握り潰されても、何事なく鳴いている。 おかしなものだ。 でも、人間も同じ。 人が一人死んでも、日常は続いていく。やがて、記憶も風化する。僕のやっていることは、人間の世界にちょっと花を添えるみたいなものだ。
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