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半年もすると僕らは、付き合いはじめた。
僕から持ちかけたのだ。
直子が死にたがっていると思ったからだ。
僕は、まゆみちゃん以外は、どんな人間かも知らない相手を殺してばかりいた。
だから、よく知り合ってから殺してみたいと思ったのだ。
もちろん、殺し方を考えなくては、警察にすぐ疑われるだろう。
身内から疑われるものだ。
恋人同士と言うのは、殺人の動機も生まれやすいからだ。
「ホームに電車が入ってくると吸い込まれそうになる。」
直子は、死への誘惑を口にし始めた。
自殺など、勿体無い。
僕は、少し焦りを感じた。
とにかく、慰めたり、なだめたりした。
直子は、どう死ぬか。
その方法を語る時やけに楽しそうだった。
でも、自分で思い切って実行する度胸がないと言う。
直子は、遠い目で死後の世界を語るようになった。
「あなたと、何処か遠くに行きたい。」
そんなことを、よく言うようになった。
遠くとは、海外旅行とかそう言うことではない事は、解る。
死後の世界のことだ。
僕は、そちらの世界に、行く気はない。
直子の部屋で過ごす時間が増えた。
そして、沈黙の時間も増えた。
直子がぼんやりと空を見つめる時間も増えた。
そして、僕の殺人への欲求も高まりだした。
彼女を知れば知るほど、その生命を砕きたいと願うようになった。
この世界から旅立たせたい。
そういう感情は、初めてだった。
まゆみちゃんを思い出す。
僕は、相手を知れば知るほど殺人の欲求が強まるのかも知れない。
それは、人々の言う恋とか愛とかに近いのかも知れない。
その日、直子は空を見つめていた。
僕は、彼女後ろ姿を、見ていた。
僕は、彼女に歩み寄り肩にそっと手をかけた。
彼女は、振り向く。
僕は、直子の首に手をかけた。
ゆっくり、ゆっくり、力をこめる。
直子の顔は、笑顔。
苦しそうだが、うれしそうな笑顔。
僕は、更に力を込める。
虚ろな表情の直子は、崩れ落ちていく。
生命が砕け散るのを、腕の中で感じた。
尚も直子を、絞め続ける。
どれくらい時間がたっただろう。
脈を図る。
何も感じない。
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