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「幸せになれと言われたよ」
「幸せにって」
待って。
まだ心の準備ができていないし、リアンを好きかもわからない。
だけどもどぎまぎしてしまう。
「ナナコがよければ、付き合ってくれないか?」
「今すぐには無理よ」
嫌だとかそんなことじゃなくて。
ただ心が追い付いていかない。
けれども信じられてしまう。
吸い込むような眼差しに私は返事の代わりに頷いた。
そっと頭を撫でられた。
リアンの指が私の髪の毛に絡み付いている。
それは出会ったときと同じ仕草だった。
あのとき感じたなにかはきっとこうなることをどこかで期待していたんだって認めざるを得なかった。
心臓を鷲掴みにされたようなドキドキがどうしたっって消えない。
はぐらかそうにもはぐらかせずに俯いて、私は聞いた。
「サーラとサナンはどうしておばあちゃんを助けることに同意したの?」
「理不尽な世界が嫌いだと言ってさ。俺の背中を押してくれた。今回もだ。交差点で君が事故に遭った時は青ざめたけれど。結果として知ってしまったんだから仕方がない」
「あの交差点が扉なのね」
「そうだよ。サーラとサナンにはすぐに会える。そうしてここは日本だ。帰りたがっていた場所だよ。安心していい」
私はリアンの手を握る。
細い指先に安心感を覚えている。
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