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ルネサンス初期の南欧の片田舎の農村。
ある年、流行り病で村人の多くが死んだ。
家族をすべて失い、たった一人生き残ったループは、残された家と畑をまもりながら、寂しく暮らしていた。
人が減った村に、街道のほうから、一人の女が流れてきた。
年かさの村人たちは、酒場で若い男たちをかたはしから誘惑しては金品をねだり、泊まり歩くその女に眉をしかめ、秘かに「魔女」と呼んだが… なにしろ生き残った若い女がとても少なかった時期なので、追い出そうとまではしなかった。
ループも御多分にもれず放浪の美女エレオノーラに押し倒された挙句しばらく居座られたが、村の貧しさに飽きたのか、やがてまたふらりと女は出て行った。
再び村に平穏と静寂が戻り、寂しい収穫の秋も過ぎ、そんなことがあったことすら忘れかけていた頃。
冬の始めの嵐の晩に、魔女エレオノーラが妊婦となって、村の独身男達の家を尋ね歩いていると噂が立った。
不行状な女に「腹の子はあなたの子どもよ♪」などと言われて、信じる男はまぁいない…
行き倒れかけた彼女が最後に扉を叩いた家で、ところがループは飛びあがって喜んだ。
「本当か!? 俺にまた、家族ができるのか…ッ?」
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