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席についた川瀬ひとみはノートパソコンを開くと、ミネラルウオーターのペットボトルをデスクに置いた。いつも決まって赤いラベルの同じ銘柄だ。その後、腕時計をはずしてペットボトルのラベルに重ねるように巻きつける。腕時計のベルトは伸縮性があるらしく、ずれ落ちたりすることはないようだった。当初、その行為の理由を佑志はあれこれと推測した。時計をどこかにぶつけて傷つけたりしないようにするためなのか、もしくは佑志の友人にもいるのだが、手首が汗ばんだりするのを嫌って腰を落ち着けた際にはかならず時計をはずすことにしているためなのか。が、あくまで佑志の想像にすぎないので、本当の理由ははっきりしないままである。
佑志にとって、川瀬ひとみは、まるでいつまで眺めていても見飽きることのない美しい熱帯魚だった。とりわけ佑志の心をくすぐったのは、水を飲むしぐさだった。ペットボトルを手にすると、まとわりつくこまかな髪をふり払うためだろうか、左手で口元をなでると小さくかぶりをふる。どういうわけか、それを目にするたびに佑志は全身がぞくぞくした。
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