焼きそば

　現実でつまらない人間はインターネットでもつまらない。
　顔も十人並みで趣味も特技もなく可愛い動物も飼っていないのにSNSを始めてしまった。何をすればいいのか全然分からないので、文化人の呟きを眺めていた。
　その中に、文化人と勘違いしてフォローしてしまった焼きそば焼きのおじさんがいた。おじさんはフォローありがとうございますとかわざわざ挨拶してくるタイプの人だったので間違ったからといってフォローを外しにくくて、仕方がないから放っておくことにした。
　放っておいても、別に害はなかった。ただ一日に一回、焼きそばの写真が流れてくるだけだった。
　おじさんは、週に六日はソース焼きそばを作りそのうち二日は紅生姜を忘れている。残りの一日は塩焼きそばか焼うどんを作っている。
　プロフィールには脱サラしてから職を転々としていることと、ずいぶん前に奥さんと子供に逃げられていることが書かれていて死ぬほどどうでもよかった。
　おじさんが焼きそばを焼いているあいだ俺は駅の中のコンビニで働いていて、時々、文化人が炎上するのとだいたい同じくらいの頻度で、タバコの銘柄を間違えたりして怒られたりしながら二年ぐらいは続けている。