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「お前ぇも連れてくからな! 」
「えぇっ!勘弁してくださいよ先輩……。私がああいう場は苦手だと知っているでしょう?」
誠が苦い顔をしても、湯山は容赦がない。
「そこがいけねぇ!お前ぇはだいたい奥手過ぎんだよ。せっかく風貌に恵まれてるってぇのに、そんなんだから二十四にもなって、未だに彼女の一人も出来ねぇんだよ! 」
確かに湯山の言う通り、誠は風貌に恵まれている。
スラリと縦に長いシルエットと、柔らかな笑顔。そして物腰の柔らかさは爽やかな好青年のそれで、これまでも何度か女性の方から声を掛けられることはあった。
「うっせぇですよ、先輩っ! 私だって、付き合った経験くらいはありますよ!……でもねぇ……お酒の席で女の人と何を話したらいいかなんて分からないですし」
「だから俺がそれを教えてやるっていってんだよ! 」
「……先輩だって彼女いないくせに……」
「るっせぇよっ! 」
「いたっ!! 」
ゴニョゴニョと口を尖らせる誠の背中を叩くと、湯山は帽子を深く被り直し、気崩れていた制服を整えた。
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