出逢い

28/30
前へ
/680ページ
次へ
「ありがとうございます!」 凛は差し出された手を掴んだ。 掌に竹刀ダコこそあれど、とても男性とは思えないほど、ほっそりとした優しい手だと凛は思った。 「ところで、お名前は?」 立ち上がった凛に沖田が尋ねる。 「失礼しました!涼川凛と申します」 凛は深々と頭を下げた。顔を上げると沖田は少し驚いたような顔をしていた。 「苗字帯刀(みょうじたいとう)のご身分でしたか!これは失礼致しました。……てっきり町娘さんかと……」 凛はハッとした。 この時代、庶民は苗字を名乗ることを許されてはいない。 苗字を名乗れるのは武士と医者と一部の力ある商人くらいだった。 ましてや、女性が(おおやけ)に姓を名乗るなど、許されていない。 それに気付いて慌てて言葉を繋いだ。
/680ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1182人が本棚に入れています
本棚に追加