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「ありがとうございます!」
凛は差し出された手を掴んだ。
掌に竹刀ダコこそあれど、とても男性とは思えないほど、ほっそりとした優しい手だと凛は思った。
「ところで、お名前は?」
立ち上がった凛に沖田が尋ねる。
「失礼しました!涼川凛と申します」
凛は深々と頭を下げた。顔を上げると沖田は少し驚いたような顔をしていた。
「苗字帯刀のご身分でしたか!これは失礼致しました。……てっきり町娘さんかと……」
凛はハッとした。
この時代、庶民は苗字を名乗ることを許されてはいない。
苗字を名乗れるのは武士と医者と一部の力ある商人くらいだった。
ましてや、女性が公に姓を名乗るなど、許されていない。
それに気付いて慌てて言葉を繋いだ。
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