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ーー近藤勇だ!
と、凛は思った。彼は写真で見た通りの無骨な武士というような顔をしている。しかし、写真で見るよりもどことなく優しい印象を抱いた。
何故ならば、凛に対しての目に敵意を感じなかったから。
胡座をかいて、腕組みこそしていたが、ことの成り行きをじっと見守っているように見え、沖田が土方の真似をした時には、少し口元を緩めていた。
そして、もう一人、沖田の土方の真似に穏やかな笑みを浮かべていたのが山南敬助だった。
彼は敵意どころか、寧ろ憐れむと言った方が適切だと思えるくらいの優しい目で凛を見ていた。
「これは失礼をしました。
娘さん、なに分この男は疑うのが仕事なもので、気を悪くなさらんでくださいね」
「いえ!そんなっ!」
軽く頭を下げる近藤に、凛は激しく恐縮して近藤よりも更に深く頭を下げた。
「勝っつぁん!何も頭を下げるこたぁねぇよ」
土方の不服そうな声に凛は身を縮めた。
「第一……」
土方は立ち上がって、凛の前まで来ると片膝をついてしゃがみ込んだ。
ーー……なに?……何ですかっ!?怖い!怖すぎるよ土方さん!
しゃがみ込んだものの、すぐに言葉を発しない土方を前に、凛の緊張がいよいよ頂点に達した。
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