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土方はスッと手を伸ばすと、凛の顎を持ち上げまじまじと顔を凝視してきた。
「……!!」
凛は呼吸すらも忘れて、固まったように土方の目だけを見つめていた。
下手に目を逸らせば殺されるかも知れないと本気で思うほど、土方は目の奥までが新選組の鬼の副長だった。
鬼が、口を開く。目はまだ十分に凛を疑っている。
「第一、お前ぇこのナリは何だ?髪の毛なんざ、まるで異人みてぇじゃねぇか」
土方に軽く前髪を摘まれて、ハッとした。
凛の栗色の髪色は、この時代の人間にとっては見慣れないものに違いない。そして髪型もしかり。日本髪が当たり前のこの時代では、前髪を下げた編み込みのお団子頭なんて、不審者でしかないだろう。
「こっ……これは……その……」
何といいわけをしようかと、頭をフル回転させてみるが頭に浮かぶのはどれもイマイチで、どう考えても目の前の鬼を納得させるには不十分に思われる。
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