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「それは……」
その代わり、近藤が口を開いた。
彼の肩が心なしか震えている。
「それは何と辛かったことだろうなぁ。混血児など、きっと今までさぞ辛い目に遭ってきただろう」
ハーフというものが大変珍しかったこの時代、人々はその異形な様を見て忌み嫌い、時には非人間のような扱いをしていたという。
近藤は凛の両肩に手を添えると、熱い眼差しで見つめてきた。
その目に薄らと涙が浮かんでいるのを見て、凛は激しく胸を痛めたと同時に、胸を打たれた。
攘夷色が強い新選組にあっても、近藤勇という男は混血児と思われる凛を一人の人間としてみなし、その身に降り掛かったであろう不遇を嘆いてくれている。
何て懐の深い人だろうと、凛は心から思った。
そして、嘘をついていることが本当に本当に申し訳なくて居た堪れない気持ちになった。
「その上、賊に襲われたとあっては本当に不憫でならんよ」
山南の言葉が更に凛の胸に突き刺さる。
嘘をつくのがこんなに辛いことが今までにあっただろうか。
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