1182人が本棚に入れています
本棚に追加
誠はいつもカラーで夢を見る。
時には夢の中で「これは夢だ」と意識を持つこともある。それをオカルトの世界では明晰夢というようだが、オカルト音痴の彼にはそんな自覚はこれっぽっちも無かった。
「それにしても、毎度リアルな夢だなぁ……」
あまりにも臨場感に溢れたそれは、まるで誰かの身体を借りてその現場にいるような感覚だった。
むせ返るような肌に張り付く湿気を纏った暑い空気も、頬を撫でる風も、木造の旅籠屋の匂いも、ピリピリと張り詰めた緊張感も全てが本物のように感じられた。
「新選組かぁ……」
夢の波打ち際に片足を突っ込んだまま、ボーッと映像を思い起こしていたら、突如鳴り響いたスヌーズに尻を叩かれ、一気に現実へと打ち上げられた。
「しまった!今日は武道訓練の日だった!! 」
誠は飛び上がるようにしてベッドから出ると、急いで身支度を整え、家から自転車で十分程の勤め先、麻布警察署へと猛スピードで向かった。
最初のコメントを投稿しよう!