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ーーね、寝れない……。
いくら押入れの襖を隔てているとはいえ、同じ室内に初恋を捧げてきた沖田総司がいるという事実が、凛の頭を冴えさせた。
眠れぬ夜は、やたらと小さな音が気になるものだ。
そこでふと、鈴虫が鳴いている事に気付いた。
ーー私……本当にタイムスリップしたのかな?
だとしたら今は何年の何月何日なんだろう?……ここに来る前は確かに夏だったはず。
……鈴虫が鳴いてる……今は、秋なのかな?
グルグルと頭の中を様々な疑問が浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
ーー明日、それとなく沖田さんに聞いてみよう。
りーん……
りーん……ーーーー。
鈴虫は鳴き続ける。
障子の隙間から入ってくる風は、ほんの少し冷たかった。
鈴虫の声に誘われて、凛はいつしか眠りに落ちていった。
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