始動

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始動

梅雨真っ盛りの六月中旬の、雨がパラつくとある金曜日の朝。 夜勤を終えた誠は、宮部のマンションを訪れていた。 チャイムの軽快な音が響くと、起きて間もないであろう宮部が、ずれた眼鏡を中指で上げながらドアから顔を覗かせた。 ドアの隙間から流れてくる空調の効いた部屋の空気がひんやりと心地よい。 「おう!誠。よく来たな!まぁ、入れよ」 「お邪魔しま~す!」 誠は靴を揃えてほどよく散らかった部屋に上がった。 「まぁ、散らかってっけど、足の踏み場はあるだろう?」 そう言われて、誠はざっと室内を見回した。 確かに宮部の言う通り、足の踏み場もないほどに散らかっている訳ではない。 八畳のワンルームの部屋の奥に、ベッドが一つ、その向かいに横に倒したカラーボックス。 その上に小さなテレビが置いてある。物は少ないが、所々に服や雑誌が散らばっているところに、如何にも一人暮らしの男の部屋という感じが漂っている。
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