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「しょうがないでしょう。仕事だったんだから」
そう言って、ここ何年か帰ってないことを思い出した。
「そんなこと言って!もう何年あってないと思っているの!」
まぁ、確かにそうなんだけど。
実家までは遠いということもあって、何気なく面倒だった。なんて口に出したら、長い説教をされそうだったので、あーとだけ返しておいた。
「全くあんたといい健二といい、親不孝な子供を持ってお母さん泣きそうよ!?」
母の台詞に思わず苦笑いをする。
「何笑ってんのよ」
非難めいた母の言葉が、そのまま説教に移りそうなので、慌てて話題を逸らした。
「あ、そういえばお父さんのSNS、アカウント名なんていうか知ってる?フォローしとくよ」
「アカウント名?」
電話の向こうで首を傾げる母の様子が分かった。
「名前みたいなものよ。知らない?」
「あぁ、ただはるって打ってたわよ、ひらがなで」
「本名入れてるの!?」
「だって名前でしょう?」
「いや、そうだけど!」
個人情報が叫ばれる昨今、世界中につながるSNSで本名を使う人は少ない。なにせその情報だけで個人を特定してくる人もいるくらいだ。
その辺のリテラシーのなさも、父が昔の人だということを物語っていた。
「登録しちゃったものはしょうがないからいいけど、滅多な事を呟かないように言っといてよ?」
はいはいと分かっているのか分からない返事をする母に、もう一つ付け加えていった。
「あと、お父さんに私がフォローしていることは言わないでおいて」
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