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リビングにずらりと並べられた女の子用の洋服を目の前に、チサトのママ友、アユミが大きなお腹をさすりながら感嘆の声を上げた。
「これ全部、もらっていいの?ありがとう!」
「ううん。リカのおさがりで悪いんだけど。二人目の赤ちゃんは女の子だって聞いたから」
アユミはリビングの続きの和室でチサトの娘、リカと遊んでいる息子のタケルを見やって目を細めた。二人は保育園の年長組で出会った時からとても仲がいい。
「そうなのよ。最初はタケルのおさがりでもいいかな、って思ったんだけど。大人しいように見えてもやっぱり男の子よね。服の傷みや汚れ方が全然違う」
アユミは「やっぱり女の子の服って、色も形も可愛くて素敵」と笑いながら服の山をうっとり眺めた。
チサトは一昨年離婚した。リカを連れて実家に身を寄せる時にリカの小さくなった洋服も処分しようと思ったのだが、「これはリカを初めて動物園に連れて行った時の服」「これは2才のリカがお気に入りだった服」などと幸せだった家庭の記憶と小さかったリカの思い出が蘇ってきて捨てられなかった――夫には全く未練がないのだが。クローゼットを塞ぎ続ける頭痛の種がこんなに喜んでもらえるなんて。よかった。
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