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浦島氏の語った五郎蔵にまつわる怪現象は、現代科学の見地や客観的視点に立って考えてみれば、ある程度の説明がつく。
まず、埋葬したはずの古田五郎蔵が現れ、家族や村人達を襲ったという話だが、埋められた人間が自分で墓を抜け出して来ることなど実際にあるわけないのだから、それはおそらく残された者達の幻覚…もしくは幻想だろう。
先程、浦島氏から聞いたところによると、五郎蔵は酒癖の悪い乱暴者として、そうとう村人達に嫌われていたらしい……きっと奥さんや子供達も、常日頃から暴力を振るわれていたに違いない。今風に言えばDV男だ。
であるならば、人々の心の内にはそんな五郎蔵に対するひとかたならぬ感情があったのではないだろうか?
死んだ時も誰も悲しまず、むしろ喜んだということだし、もしかしたら葬儀や埋葬の方法もおざなりだったのかもしれない。
もしそうだとすると、村人達には彼に対する後ろめたさというものも多少なりとあったはずだ。
いや、ひょっとすると、生前から凶暴だった彼は、死んだ後もバケモノとなって悪事を働くに違いない…という考えが初めから村人達の間にはあったのかもしれない。
そうした五郎蔵に対する恨みや恐れ、不安といった負の感情が、そのように恐ろしい幻覚を村の人々に見せたのではないだろうか?
加えて、彼の墓の下から聞こえてきたという物音が、その幻覚を助長したことは充分に考えられる。
五郎蔵の亡霊に怯える極めて不安定な精神状態の中で過ごしていれば、健康を害するのだって当たり前だ。身体の弱い者やもともと病がちだった者ならば、衰弱して亡くなることだってあったかもしれない……。
それがおそらく〝墓を抜け出した五郎蔵〟の真相であろう。
すべては、村人達の怯える心が生んだ集団幻想だったのだ。
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