22人が本棚に入れています
本棚に追加
「名前は最後にも名乗るけど、それは理由がちょっと違う。何かあって再度電話を掛け直されたお客様が、すぐに名指しでスタッフを呼べる様に最後にも名乗るのだ。一度注文を受けたスタッフの方が対応しやすいからな。逆に言えば、電話対応で失敗したら名指しで怒られるぞ。気を付けろよ」
凄い嬉しそうな顔をしている。これは私を驚かそうとしているな。
ちょっとウザい店長への返しを考えていると、横から里子さんが割り込んできた。
「店長、事務処理が溜まってるんでしょ? 邪魔だから消えて下さい」
「なっ!? この俺様が邪魔だと!?」
「はい、邪魔です」
「……覚えとけよ」
嵐の様に現れて去って行く店長に対し、里子さんは笑顔で手を振る。
「あの……大丈夫なんですか?」
「店長の事? 大丈夫よ。ああでも言わないと、また睡眠時間を削って仕事しちゃうからね」
「睡眠時間を?」
「殆ど寝てないみたいだよ。今日もね、私が出勤したら事務所にダンボールを敷いて寝てたの。笑っちゃうでしょ? あの人は超人なんだよ」
ダンボール超人? ホームレスみたいなプロレスラーのイメージが湧き上がってきた。
これから少しずつ、私は店長の超人的な仕事を目の当たりにする。そして、里子さんの言う超人の意味を理解するのだった。
最初のコメントを投稿しよう!