電話対応

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「名前は最後にも名乗るけど、それは理由がちょっと違う。何かあって再度電話を掛け直されたお客様が、すぐに名指しでスタッフを呼べる様に最後にも名乗るのだ。一度注文を受けたスタッフの方が対応しやすいからな。逆に言えば、電話対応で失敗したら名指しで怒られるぞ。気を付けろよ」  凄い嬉しそうな顔をしている。これは私を驚かそうとしているな。  ちょっとウザい店長への返しを考えていると、横から里子さんが割り込んできた。 「店長、事務処理が溜まってるんでしょ? 邪魔だから消えて下さい」 「なっ!? この俺様が邪魔だと!?」 「はい、邪魔です」 「……覚えとけよ」  嵐の様に現れて去って行く店長に対し、里子さんは笑顔で手を振る。 「あの……大丈夫なんですか?」 「店長の事? 大丈夫よ。ああでも言わないと、また睡眠時間を削って仕事しちゃうからね」 「睡眠時間を?」 「殆ど寝てないみたいだよ。今日もね、私が出勤したら事務所にダンボールを敷いて寝てたの。笑っちゃうでしょ? あの人は超人なんだよ」  ダンボール超人? ホームレスみたいなプロレスラーのイメージが湧き上がってきた。  これから少しずつ、私は店長の超人的な仕事を目の当たりにする。そして、里子さんの言う超人の意味を理解するのだった。
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