リーダー試験

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 アルバイト漬けの夏休みが終わり、新学期が始まる。  私がアルバイトを始めた頃に比べれば、平日の売上は見違える程に変わった。でも平日のインストアは、里子さんともう一人いれば十分だ。  私のシフトも減ってしまったが、店長に会いたいから休みの日でも店に顔を出す。 「里子さん、遊びに来たよ……って、あれ? 顔色が悪いですよ。体調不良ですか?」 「あら、未来ちゃん。いや……ちょっとね……」  いつも血色の良い里子さんが青ざめている。そして、明らかに態度がおかしい。詳しく聞きたいが、自分から話してくれないから重い内容なのかも知れない。取り敢えず店長に聞いてみよう。 「店長、ただいま!」 「お帰り。そろそろ夏休みボケは抜けたか?」 「それが中々抜けなくて……そんな事より、里子さんの様子がおかしくないですか?」 「里子? ああ、リーダー試験を控えているからな」  リーダー試験? 理解出来ずにいると、アルバイト昇格条件と書かれたファイルが渡される。  ファイルの中には、アルバイトの役職名と昇格条件が書かれていた。アルバイトには、サブ、チーフ、プロフェッショナルと、三段階の役職があるらしい。それらを纏めてリーダーと呼ぶ。どうやら里子さんは、一番下のサブリーダー試験をする様だ。 「俺がいない時は里子が店を仕切っているからな。他の店舗で里子と同レベルの仕事をしているスタッフは、最低でもサブリーダーの役職に就いている。リーダーになれば時給も上がる……このままじゃ不公平だろ? だから推薦したんだ」 「推薦?」 「サブリーダー試験は店長の上の役職である、マネージャー職の人が行う。石野マネージャーを覚えているか?」  たまに店の様子を見に来る長身の人だな。気さくな人だけど、過去最高の早さでマネージャーに昇格した凄い人だと聞いた事がある。
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