リーダー試験

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「その石野マネージャーが試験官だ。さてと……ちょっと出かけて来るから、未来は里子の緊張をほぐしてやれ」 「分かりました!」  元気よく返事をしたものの、どうすれば良いのだろう? 里子さんにはお世話になってるので協力したい。取り敢えず話をしてみようかな。 「里子さん、リーダー試験があるんですね」 「店長に聞いたのね。明後日の夕方なんだけど、緊張しちゃってさ」  明後日は私もシフトに入っている。もしかして、試験を見れるのかな? そう考えると、何故か私までドキドキしてきた。 「試験は難しいんですか?」 「ピザの土台となる生地を二分以内に作って、トッピングを三分以内にするのよ」  合計五分……里子さんなら楽勝だろう。最近ピザを一通り作れる様になった私でも大丈夫そうだ。 「それでね、チーズやトッピングの量をグラム単位で見られるのよ。減点方式で、多くても少なくても減点。それと焼き上がりの綺麗さも採点されるの」  それは辛い。チーズの量などは、手に持った感覚で正しい量を覚えないといけない。例えば百グラムのチーズをピザに乗せるとして、チーズが入っている入れ物から、一回に五十グラムを手に取れる様に体へと覚えさせる。それを二回行えば百グラムだが、それが中々上手く行かないのだ。私なんて数十グラムの誤差が出てしまうから、いつも量りを使って確認している。店長は数グラムの誤差しか出ないから、凄いと言わざるを得ない。 「それでも里子さんなら余裕ですよね?」 「石野マネージャーは知ってるよね? 店長がいない時に聞いたんだけど、あの店長が頭を下げてお願いしたらしいの。マネージャーはまだ早いって言ったのに、里子はリーダーの資格があるからって……今迄の店長はそんな事してくれなかったのよ」 「うわっ……それは緊張しますね」  店長ならやりそうだ。私たちの前ではふざけてばかりなのに、陰ではみんなの事を第一に考えてくれる人なんだ。だから店長を嫌いなスタッフなんていない。 「でも、試験に合格すれば時給が上がるんですよね? 頑張りましょう!」  応援しか出来ない自分が情けなく感じる。  そして、試験の日はあっという間に訪れた。
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