22人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
試験当日。
学校が終わって店に急ぐと、既に石野マネージャーが来ていた。
「おっ、インストアが来たぞ。川本、そろそろ試験をやるから準備しろよ」
川本? ああ、里子さんだった。名字で呼ぶ人がいないから新鮮なイメージだ。
私が着替え終わると、すぐに試験が始まる。店長は事務所で売り上げ管理をしていた。たぶん、後ろで見ていたら里子さんが緊張しちゃうから事務所に引き籠っているのだろう。
横目で試験の様子を覗くと、いつもの里子さんじゃなかった。ピザの生地を作るのも遅いし、トッピングも時間が掛かっている。そして、出来上がったピザは少し形が崩れていた。
里子さんの作るピザは店長よりも綺麗な場合が多い。でも、緊張して力が入り過ぎたのだろうか? 私の作るピザよりは遥かに綺麗だが、里子さんのピザじゃないみたいだ。焼き上がった後に、石野マネージャーから細かい指摘をうけている。
駄目なの? 時間は間に合ったの? 私の方が緊張し過ぎて、胃が痛くなってきた。
暫くすると石野マネージャーが事務所に入り、店長に何かを渡して店を後にする。そして店長が里子さんの前に立った。
最初のコメントを投稿しよう!