リーダー試験

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「よく頑張ったな。ほら、お前の名札だ。受け取れ」  里子さんの手に収まったのは、私の白いものとは違った綺麗な青色の名札。 「今日からこれを付けろ。サブリーダーの証だ」 「おっ、おめでとうございます!!!」  里子さんが口を開く前に抱き付いてしまった。 「ありがとう、未来ちゃん!」  店長は悟られない程度に笑みを浮かべる。 「良かった……店長の期待を裏切らなくて良かった……」  里子さんは同じ事をうわ言の様に何度も繰り返し呟いていた。そこへ、今日は休みのはずの里子さんの彼氏が現れる。邪魔にならない様に、陰から見守っていたんだな。 「里子、もう上がっていいぞ。今日は遊びに行ってきな」 「はい!」  同じ体型をしたタヌキ……じゃなくて、二人が微笑ましく街中へと消えて行く。 「なあ、未来……」 「分かってますよ。最後まで付き合います!」  お互いの為を思って信頼関係を築いていく。私は社会人にとって……いや、人として大切な事を学んだ。  この店でアルバイトを始めたのは偶然だった。でも、本当にこの店を選んで良かったと思える。  こうして私は、半年前とは比べ物にならない程にレベルの上がったスタッフたちと、年間を通して最もピザが売れる最大のイベントを迎える事になる。
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